母乳バンクの支援活動 Vol.2

どんな状態で生まれても
成長する力を育める

母乳バンクの支援活動 Vol.2

中国、ベトナム、インド

世界では、毎年出生数全体のおよそ7人に1人にあたる約2,000万人以上の赤ちゃんが2,500g未満の低体重で生まれています。※1

そのなかでも、様々な感染症や病気に罹るリスクが高い早産・極低出生体重児(1,500g未満で生まれた赤ちゃん)においては、「母乳は薬のように大切なもの」とされ、母乳を与えることによって、生死に関わる壊死性腸炎に罹るリスクを、人工乳に比べおよそ1/3に低下させる効果があると言われています。※2

※1 公益財団法人 日本ユニセフ協会HP

※2 QUIGLEY MA. HENDERSON G. ANTHONY MY. ET AL. FORMULA MILK VERSUS DONOR BREAST MILK FOR FEEDING PRETERM OR LOW BIRTH WEIGHT INFANTS. COCHRANE DATABASE SYST REV. 2007; (4):CD002971.

しかし、全ての母親が出産直後から十分な母乳が出るわけではなく、必要量の母乳を与えられないこともあります。そのような場合、寄付された母乳を低温殺菌処理した「ドナーミルク」を与えることが推奨されており※3、その処理・保管をする施設が「母乳バンク」です。

ピジョンでは、専門的なケアを必要とする赤ちゃんとご家族向けの活動の一つとして、日本をはじめとして、中国・インド・ベトナムなどにおいても、母乳バンクの支援を行っています。

※3 早産・極低出生体重児の経腸栄養に関する提言, 日本小児医療保健協議会栄養委員会, 日本小児科学会雑誌, 第123巻第7号

中国での取り組み

中国では、2013年に広州市母子医療センターに国内第1号の母乳バンクが開設され、その後、上海、重慶、北京などの各地に開設されました。しかし、母乳バンクの認知が広がっておらずドナーミルクが少ないこと、母乳バンクの運営資金不足などの原因により、ドナーミルクを必要としている赤ちゃんの1割しか提供できない状況がありました。この状況を受けてピジョン上海では一人ひとりのかけがえのない命を大切にし、私たちの存在意義「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」を実現するためにも母乳バンク支援を開始しています。

中国北京春苗慈善基金会との活動

2020年に中国北京春苗慈善基金会「母乳バンク特別基金」の第1号メインパートナーとなり、2020年から2023年7月までに合計100万人民元(約1,900万円)を寄付し、福建省小児病院、北京華信病院(清華大学第一付属病院)、雲南省の昆明市小児病院など合計6病院内での母乳バンク新設に貢献しました。支援開始からおよそ170万mlにおよぶドナーミルクを1100人以上の小さく生まれた赤ちゃんに届けています。

上海児童基金会との活動

PSHは上海児童基金会を通じて、上海の復旦大学付属児童病院に対し、2022年~2024年の3年間に合計180万人民元(約3,500万円)の寄付を行う予定です。寄付金は、当病院内に建設中の中国国内最大規模となる母乳バンクの設置やNICUに入院する赤ちゃんのご家族が病院で付き添いをするためのファミリールームの設置に活用されます。

この他にも、ピジョン上海では2020年11月から2023年7月までの間にさく乳器、母乳フリーザーパック等、約50万人民元(約1,000万円)相当の商品寄贈や母乳バンクに関する調査を実施するなど、母乳バンクの運営支援や、社会における母乳バンクの普及啓発活動にも注力しています。

私たちは、これからも専門的なケアを必要とする赤ちゃん一人ひとりの健やかな成長を支え、ご家族がより安心し幸せを実感できるように支援を続けていきます。

ベトナムでの取り組み

「Tu Du Maternity Hospital母乳バンク」へ支援開始

ベトナムには、2022年現在、国内に4つの母乳バンクがあります。

ベトナムの新生児の死亡率は依然高く、1歳未満の死亡数の70~80%を新生児が占めています。

こうした中、今年8月にピジョンシンガポールは、ベトナムで2拠点目となる母乳バンク、ホーチミン市の病産院Tu Du Maternity Hospitalの母乳バンクへのサポートを正式に開始しました。

この病院では、ベトナムの年間出生数の約5%にあたる約70,000人の赤ちゃんが誕生します。そのうち25%の17,500人は未熟児や早産児、疾病児、病院で誕生後に孤児となった乳児などで、ハイリスクで特別なサポートが必要な赤ちゃんです。

ピジョンシンガポールでは、母乳フリーザーパックを1,500個、さく乳器12台、母乳パッド50,000枚を寄付しました。

今後は、国内最大規模のHung Vuong Hospitalにある母乳バンクやダナン市の母乳バンクへも支援を展開し、授乳室の設置やチャリティーイベントなども計画しています。

インドでの取り組み

「Amaara母乳バンク」へ支援開始

インドでは、年間2,500万人の赤ちゃんが生まれており、そのうち350万人以上が低出生体重児と言われ、その数は、2位の中国の3倍以上です。母親から母乳をもらえないハイリスクの赤ちゃんが多く母乳バンクがそれだけ必要とされています。しかし、国内に30ヵ所の母乳バンクがあるものの、運営資金不足により施設が圧倒的に不足し、その膨大な需要を満たしきれていないのが現状です。

そんな中、ピジョンインディアでは、2022年よりデリーにある「Amaara母乳バンク」への支援を始めました。Amaara母乳バンクは、デリー、グルガオン、ノイダ、ガージアバード、ミールートといった地域で母乳を集め、近隣の約70ヵ所の病院に母乳を供給しています。

ピジョンインディアは初回に電動さく乳器2台、手動さく乳器10台をこの母乳バンクに寄付し、さらに毎月看護師2名の雇用費(月給Rs35,000)、哺乳器100本、保存ボトル50本を寄付していきます。

ピジョンインディアが運営の厳しい母乳バンクのサポートをすることで、安定的に運営できる母乳バンクが増えるとともに、新しい母乳バンク自体もインドでもっと増えるよう活動をしていく予定です。

2023.11

関連リンク